意外と知らない!? 白ホリスタジオの豆知識 - CONTENTS @ studio DATA BASE by POWER PAGE

撮影方法は熟知していても、その構造や施工まで知っているフォトグラファーは少ないはず。博報堂プロダクツEN studioの施工などを手がけたアイケー総業に白ホリ豆知識を教えてもらった。

協力：博報堂プロダクツフォトクリエイティブ事業本部

そもそも白ホリって何？

ホリとはドイツ語で水平線を表す「Horizont」の略。床と壁面の境界線が緩やかな曲線でつながっている。そのため、被写体と床面の境界に影が出ず無限の空間を表現できる。白ホリはフォトグラファーにとって、ライティングで光を作り上げていくには絶好の撮影場所だと言える。

白い壁面は光に対する反射率が高く、白ホリ空間は基本的に外光が入らないよう遮断されている。ちなみにイギリスでは「Cove」、アメリカでは「Cyc（Cyclorama）」と言う。

アールホリゾントのアールって何？

床と壁との境目や角部分の曲面のこと。「アール（ r ）」とは「Radius」（半径）に由来し、壁から半径距離の単位である。この曲面の基本的なサイズは600～900 R。スタジオ全体の高さや奥行きによって、このアール曲面の大きさはそれぞれ異なる。アール部分が正面のみの1面Rを基本とし、それに加えてサイドがRになった2面R・3面Rもある。特殊なアールホリゾントの例では、車の撮影などで使用する天井面にもアールがついたドームスタジオがある。

白ホリは5重構造
職人の手技があってこそ

「骨組み組み立て」「ボード組み立て」「下塗り」「樹脂・パテ塗り」「乾燥」「研磨」「仕上げ」といくつかの工程に分けて進められる。水平を確認しながら、床の凹凸が出ないよう全て職人の手作業によるものだ。この工程の積み重ねで壁・床面の強度を高め、亀裂を防いだり堆積したペンキ塗料をはがしやすくしたりする。その後のパテ塗りを経て、電動紙ヤスリで研磨し、よりフラットに仕上げていく。その後、仕上げの塗料を塗る。

アイケー総業で使用しているホリゾントスタジオの整備図。骨組みを組み立てた後、下塗りのプライマー処理、エポキシ樹脂やエポキシパテ、パテ、ホリゾント用塗料を重ね塗っていく。

施工では「水平」と「乾燥」が肝！

光をあてた時に不要な影が出ないよう、床や壁面の塗装や研磨は職人たちの手作業で行なわれる。水平器や電動紙ヤスリなどは使うものの、それを使いこなしフラットに仕上げるのは職人たちの感覚と技術があってこそ。また、施工でネックになるのは、パテや塗料の乾燥時間。完全に乾かなければ、次の工程に進めないのだが、基本的に白ホリは窓がないため空気の入れ替えができない。天気、湿度やスタジオの場所、新築かリフォームかなどの状況によって、乾燥時間を読みながら進める。

“上質な白色空間”を作る専用塗料

白ホリ特有のあの真っ白な空間は、ホリゾント専用塗料によって作られている。メーカーによって微妙に色や質感は異なるが、いずれも耐水性で完全つや消し、塗料の伸びが良く、重ね塗りで厚くなってもワレが出にくい、などが特徴。スタジオでは床面が汚れたり、フォトグラファーから真っ新なホリで撮影したいと依頼があった時、塗り直してくれる。ライトをあて、塗りムラをチェックしながら、ローラーやハケで塗り重ねていく作業は、スタジオスタッフの腕の見せどころでもある。塗料が次第に堆積したら、数年に一度バールでパテの部分まで剥がし、塗り直しの作業を行なう。