真っ白いホリゾントがある通称「白ホリスタジオ」。ホリゾントとはドイツ語で地平線のこと。床と壁の境界に緩やかなアールがあり、境界に影が出ない。ひとつの壁面のみアールがついている「1面R」タイプが一般的だが、2面R、3面Rを持つスタジオもある。またRがないものは「直角ホリゾント」と呼ばれている。白い大きな面があるため、ペーパーを使った白バックよりアングルの自由度が高く、光もきれいに回る。外光の入らない空間にストロボなどの照明で光を作りあげていく白ホリは、フォトグラファ ーの技量が問われる場でもある。
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以前は、「あのスタジオのホリの光の回り方がいい」とか「塗り直したばかりのまっさらなホリで撮影したい」と話すフォトグラファ ーも多かったが、デジタル撮影のためか、最近はそういったことを気にする人が減ってきているとか。
それでも真っ白なホリゾントはフォトグラファーのステージ。どのスタジオも気持ちのいいホリにはこだわりがある。
直角ホリゾント|角アールがない箱形タイプの白空間
壁/床面の境界がアールではなく、直角になっているスタジオ。バストアップのポートレイトやテーブルトップのブツ撮りに使われる。また、アールがないため奥壁面ギリギリまで使えるのも特徴。
たとえばハコ馬にモデルを立たせ、後ろの壁に影が落ちないよう左右からライティングして全身撮影。ハコ馬をレタッチで消せば、「キリヌキ風」白飛ばしのファッションカットが完成。
真俯瞰撮影
白ホリスタジオの天井にはライトなどを吊るすための昇降式のバトンがある。中~大規模のスタジオでは、そのメンテ用の天井キャットウォークに真俯瞰撮影ができる「俯瞰ピット」(下を覗ける50cm四方程度の穴)を設けている所もある。
水をバシャバシャ使えるスタジオ
水槽を使う撮影くらいなら、通常の白ホリスタジオでも養生をすれば可能だが、さすがにモデルに水をかけたいとか、雨を降らせたいとなると、対応できるスタジオは少ない。映画用スタジオか、水使用可能なハウススタジオ(プール付きスタジオや廃墟タイプには水を使えるところがある)という選択が一般的だ。写真はそんな「水バシャ」撮影ができる白ホリタイプのスタジオD21のB st。床面の奥と手前を間に排水溝があり、水を流し続けての撮影ができる。
ムービー対応の大型ホリ|大がかりなムービー撮影にも対応可能なスタジオ
CMなどの撮影による、セット建て込みにも対応する大型スタジオ。資材搬入のため、トラックでのスタジオ直搬入が可能なところも多い。スチールでは、一度に複数のセットを組む撮影などに利用されるという。写真はイメージスタジオ109 YOTSUYAのY1 st。1面150坪。四ツ谷駅近くにこんな広い撮影スタジオがあるの、ご存知でしたか?
白ホリの影の立役者
白ホリスタジオではホリの汚れが目立つと、白ペンキを塗る。そのペンキがこちら、関西ペイント(カンペ)の「SW20」。スタジオの要望を取り入れて、白ホリ用に配合された水性ペンキだ。完全つや消し、高白色、蛍光材未使用。厚塗りができて塗り面が細かい凹凸になるため、テカりがない。刷毛で塗るか、ローラーで塗るか、スタジオそれぞれでこだわりがあるようだ。重ね塗りをするため、ホリは徐々に厚くなっていく。そのためスタジオでは数年に一度、ペンキを全部はがして塗り直している。
大量一斉メイク対応
モデルを一斉に撮る場合や、エキストラがたくさん入るコマーシャル、大人数のタレントグループの撮影…メイクルームはどうする?大人数の撮影が多いムービー撮影対応の大型スタジオなどでは、そうした要望に応えるために、メイクルームの数も多く、中にはかなり広い部屋もある。
イメージスタジオ109 YOTSUYAの「Green Room」と名前がついた部屋にはメイク台が6×3列。一挙18人がメイク可能。テレビや舞台の楽屋に近い感じだ。